日本国内の就業者6千人余の9割弱は何らかの組織や団体に雇用され働いています。昔ながらの日本企業や職場には、上司や同僚の家族共同体的な伝統がありましたが、昨今の労働市場変化により、人間関係が希薄になり従来の支援機能はほとんど失われています。それにより、いまや職場の人間関係の悩みがストレスの最大要因となっていて、職場でおきる大人の「仲間はずれ」を始めとする心理的負荷によるメンタル不調などの問題も加わっています。
心の健康問題の発生過程は、個人差が大きいため、そのプロセスの把握は難しくもありますが、人間関係の改善をなくして職場の目標達成は困難であります。これには、大きく分けて2つの方向からのアプローチを同時に行う対処法が必要です。
職場内で起きるいじめ、「大人の仲間はずれ」の対処法

「仲間はずれ」によるストレス反応は、身体症状、精神症状、行動反応として表現されて、意識しなくてもつい無意識的に心身の緊張が強くなり自分のことばかり考えてしまいます。これに対応するもっとも根本的な対処法は、ストレス要因を除去もしくは軽減することです。
大人も子ども同様に、「職場の仲間はずれ」のきっかけの1つに、仲間はずれをする側が、自分と違うということに対して、感情的に受け入れていない点があります。
本来、人は違って当たり前であり、それぞれの個性を尊重し認め合うはずですが、ここを受け入れていないと、自分の意見や価値観が正しいとなってしまい、違う側を攻撃し好ましくないものとして排斥してしまう傾向にあります。ただし、子ども時代と違うのは、大人である社会人は、実力が違えば職場(会社)からの評価も変わってきて、これで解決する場合もあります。
もう1つの方法は、セルフケアによるストレス耐性の強化です。ストレスとの付き合い方を工夫し、どう折り合いをつけていくか知識を身に付け、それを活用することでストレス耐性の強化に繋がる訓練をしていく方法になります。ここでは、その対処法について簡単に説明していきます。
湧いてきた感情を認めて許可しよう
日本には、1年の中で春夏秋冬という四季があるように、人間の精神状態にも四季があります。ストレスにさらされると、ストレスを身体で受け止めやすくなり、心身の疲労がより強く、それが原因で精神疾患を引き起こしやすくなることがあります。そのため、まずは、仕事や職場から離れての休養が第一になります。
元気な頃にできた仕事量も、仲間はずれによる心身的なストレスにさらされた状態が続くときでは、こなすことができなくなっていても不思議ではありません。またこのようなときに、ネガティブな状態になることは悪いことではありません。むしろ、ネガティブで嫌なことや腹立つ感情を抑え込んでいるのであれば、まずは、その湧いてきた感情や気持ちを感じきり、言いたいことを自分に許可して口にだして認めてみましょう。職場から離れて誰もいないところがいいでしょう。
ネガティブな感情である心の声を無視し、抑え込めば抑え込むほど心の中で暴れて、ますます、あなたを追い込むことになってしまいます。そしてより、孤独を感じてしまいます。一番身近で、一番の味方である、あなた自身の心の声を無視する行為は、あなた自身を裏切る行為になり、自分自身を信用できなくなってしまいます。すると、あなた自身を信用できないなら他者も信用することが出来なくなってしまいます。
あなた自身の心の声を無視するのをやめて、「○○(不安・悲しい・怒り・嫌な気持ちなど…)だと今、感じているんだ」と認めて、まずは、あなた自身と仲直りをする覚悟を決めましょう。そして、あなたが、周りから掛けて欲しい言葉を、あなた自身に伝えてみましょう。そうすれば、自分自身との信頼関係が深まり、周りからも同じような言葉を掛けてもらえるようになります。
いじめる反応を引き出してしまう行為に気付こう
職場にかかわらず、どこに行ってもなぜだか、いじめられる、けなさせる、大人になってからも人から攻撃される傾向にあるという方は、実は、人が怖くて怯えてオドオドした対応を無意識に表面に出してしまうので、それが目立ちいじめられやすくなってしまいます。初めて会って挨拶をしただけなのに、妙に相手に対して、ペコペコしてしまったり、下を向いたまま挨拶して、目を合わせなかったりすると、相手は、あなたの内心のことは知りませんから、不快感を抱きイライラして怒りが湧いてしまいます。
いじめられる人は、相手がそのように不快に思っていることには気付いていないため、ずっと、その状況のまま過ごしてしまいます。相手の怒りを引き出してしまっていることに気付いていないのです。そして、相手から攻撃されても「嫌だからやめてください!!」と、怒っていることを示すことが出来ず、自分の言いたいことが言えず反撃しない傾向にあります。この場面でさえ我慢していれば済む、人が苦手で怖いから黙っていれば隠し通せると、大人になった今でも勘違いしていたり、反射的に攻撃されても笑ってごまかしてしまいます。
また、攻撃されると頭が真っ白になって、瞬間的に意識が飛びボーッとして固まってしまい何も言えなくなってしまうタイプの人もいますが、攻撃してくる相手というのは、何かしら攻撃しやすい人に対しても同じようなストレスを抱えています。よって、あなたが相手から攻撃を受けたとき、笑ってごまかしたり、その場しのぎをして何も反論もせず黙っていたままだと、相手は、あなたを苛める行為によって、なにかしらの反応を示して貰えてうれしく感じてしまいます。
あなたに対してなら理不尽な行為をしても騒がないし、反撃してこないという安心面があると判断されて、いじめる側のストレスを受け止めてくれるサンドバック代わりやストレスの捌け口として、ますます、いじめのターゲットとして見られてしまいます。あなたが怖れや不安を抱えたまま相手に接すると、相手側の怖れや不安も引き出してしまう結果になりますので、まずは、あなた自身の恐れや不安と向き合い、オドオドしてしまう態度やハッキリと話せない原因は何かを解決してみましょう。
そして人間は、大人でも子どもでも何らかの障害によって欲求が阻止され、満足されない状態に陥り、ぶつけようのない怒りがあったとき、その緊張から攻撃的になりやすい傾向があります。そういう欲求不満が溜まると、自分よりも弱き者を見つけて、その捌け口を求めてしまうという愚かさを持っています。その時に、それは相手の問題であり、あなた自身の問題ではないということに気付き区別してみましょう。
できることからやってみよう
『水からの伝言』(江本勝著/波動教育社刊)という言葉で変わる水の結晶写真集があります。投げかける言葉によって、なんらかな物理的な情報を水が記憶し、凍る際に特徴的な結晶の形となるもので、「ありがとう」というプラスの綺麗な言葉なら結晶もきれいになり、「ばかやろう」というマイナスで汚い言葉をかけると、結晶がつぶれた醜い形になるというデータ写真集です。
もし、これが本当なら大人の人間の身体も7割が水ですから、自分自身に掛ける言葉の遣い方に意識を向けてみましょう。言葉というのは、『言霊』というくらいにエネルギーがあります。まずは、あなたの会話の中から、マイナスと感じる言葉を排除してください。マイナスの言葉を言いそうになったら、下唇を噛んで言わないようにしてみましょう。
例えば、「自分は、気が弱い性格」だと思っているとしたら、「控え目で、おっとりしていて自分は優しい性格である」と言い換えてみましょう。プラスのことが言えないと思ったら、あなた自身に対して、「この状況の中で素晴らしいことは何でしょうか?プラスに感じることは?良かったことは何でしょうか?」と質問してみましょう。すると脳は、質問された答えを求めに行き、そこで素晴らしいものを発見できます。
また1日1回、5分でいいので、まずは、あなた自身の体の使い方を変えてみましょう。体を動かすと感情がポジティブになります。いつも顔を下に向けて歩いている人は、顔を上にあげて空を見上げてみましょう。鏡を見たら、そっと口角を上げて笑顔を作ってみましょう。普段やらないスキップをしてみてください。気持ちがあがり気分が一瞬、良くなります。
精神的に、くよくよと思い悩んだり心配することは身体を直撃します。それが最大のストレスです。あなた自身が、自分をどう思っているのかと思っていることが一番のストレスなのです。よって、あなた自身があなたのことを「気が弱い性格」だと思い込んでいるとしたら、周囲からもそのように見えてしまい攻撃されてしまいます。
まずは、あなたから言葉の口癖や身体の遣い方を見直してみましょう。そして職場や、あなたの大切な関係の中で、プラスな言葉だけを掛けてみてください。どれだけ人間関係が良い方向に変わるのか体験してみてください。あなたの心の状態や感情の管理をすることで、化学反応が起きて、少しずつ周囲の環境が変わってくることに気付いてみてください。
そして職場内で、もし誰かと会話をしている中で、分からない時は素直に「教えていただけませんか?」と聞いて質問をしてみてください。通常の人間関係の中で、相手が何が欲しいのか分からず困ってしまい会話が続かないと考えているなら悩まずにすぐに聞けばいいのです。
「ここであなたの喜ぶようにしたいのですが、どうしてもあなたがここで何が欲しいのか分からなくて苦しんでいます。教えて頂けないでしょうか?」と、聞く習慣を身に付けてください。コミュニケーションの目的は、総合理解に至ることです。お互いがお互いのニーズが解るようにすることです。
「もじゃもじゃもじゃ…どうなっているか解りませんけど…」こういう言い方は誤解を招くので是非やめてください。胸を張り、自信を持って「○○は、このように思います(します)」「○○は、このようにしようと思ってます」と、相手に対して一貫性を持って最後まで言い切ると職場内でも信頼性が生まれます。
方針や方向性がたびたび変わってしまうと、あなたの無意識もその話を信用してくれません。それを実現するために働いてくれないという悲惨な結果にもなってしまいます。初めから終わりまで矛盾なく、あなたの身体や表情、話している言葉すべてが真実であるというような状態でコミュニケーションを図るようにすれば、あなたは、たちまち職場にいる周りの人から力強くパワフルですねと言われるようになります。
まとめ
「職場でのいじめ」が多発している現代。その背景には、成果主義の導入や職場の労働環境が厳しくなっていることも考えられます。従業員は会社のかけがえのない財産のはずですが、その中でも大人の職場でおきる「仲間はずれ」と聞くと個人的なこととして片づけられてしまいます。企業側からの支援が無い場合や欲しい結果が得られていなければ、まずは、何でもいいから違うアプローチや対処法を思いっきり試してみてはいかがでしょうか。
同じ問題が、何回も何度も続いている場合は、その原因を突き止め取り除くように、あなた自身のアプローチを改善してみてください。最初の1回から欲しい結果が得られるとは限りません。ですから、やり方をその都度、改善していきましょう。また更にやり方を改善し、またさらに…というふうに何回もやり方やアプローチの仕方を変えてみましょう。あなた自身の欲しい結果が、いずれ得られるまでやってみてくださいね。
こちらの記事もご覧ください。 ⇒中学生・高校生の友人関係による仲間はずれ~心理対処法~